7時半に目が覚めた。
いつもより1時間早く寝たから起きる時間も普段より1時間早くなったんだろう。生真面目な身体だ。
雨だから洗濯も回せないし、彼女が起きてくるのは8時過ぎだから朝ご飯を用意するのはそれに合わせてだし。
早めに起きてもやることはない。
でもなんだかいつもより清々しい気分だ。つくづく朝型だな、と思う。
そういえば昨日彼女が「ゆで卵食べたい」と言ってた。
せっかくだ、今作っちゃおう。お湯を沸かして卵を入れた。
この間に洗い物も……などとしてる内に彼女が目を覚ました。
「なんか顔がベタベタする」と顔を触りながら彼女。
寝起きで顔がべたつくなんて汗以外ないのでは、と思うも一応疑問形で「汗?」と俺。
「うーん、汗なら全身ベタつくと思うんだけど顔だけなんだよね……」
朝から彼女が推理タイムに入ったところで、セットしていたタイマーが鳴った。卵をお湯から上げなければ。
「あ!分かった!窓開けて寝てたからだ!雨の飛沫が顔にかかってたんだよ!」
彼女は得意げに言う。何だそれ、と二人で笑った。
いい感じに中がほんの少し半熟のゆで卵、昨日の盛大に失敗した鶏ハム。
まさしく陰と陽、光と影。この2つが冷蔵庫に鎮座していたのでお昼はそいつらとカップ麺にした。
ていうかタンパク質摂り過ぎでは?この後、筋トレでもするんか?
彼女に「ゆで卵何つける?」と聞くと「塩」と即答だった。
あとで聞いた話によると彼女はゆで卵には塩かマヨネーズらしい。じゃあ俺も今回は塩でいいや。
俺自身、ゆで卵には絶対コレ!みたいな調味料はない。
その日の気分で変わったり、人に合わせたり、一番手に取りやすい位置にあるやつでいいや、とかする。
晩ご飯は彼女のリクエストでガパオライスにすることにした。
ちょうど家にガパオライスの粉?もあることだし。
俺自身ガパオライス作ったことないし、レシピを覚える良い機会だ。
材料を調べると玉ねぎ、パプリカまたはピーマン、ひき肉の3つだった。
「ピーマンorパプリカかあ…」
俺はピーマンとパプリカが嫌いだ。
でも最近、ピーマンは食べられるようになってきた。
これが大人になる、ということだろうか。
多分違う
ただパプリカだけはどうしても苦手意識があった。
なんで苦手なんだっけな……。ああ思い出した。
昔お母さんが焼きそばにド厚いパプリカ入れてて、後味ピーマンだし、パブリカの皮固いし、それでダメになったんだ。
文字に起こすと何ともまあしょうもない理由だけど、ダメなものはダメなんだ。
野菜売り場を見ると、なんと今日はパプリカの方が安いではないか。
アーメンハレルヤ。オーマイゴッド。
これは神が与えた試練だというのか。
なら乗り越えてやるよ。俺はパプリカを手に取った。その時初めて気がついた。
俺、パプリカ買うの初めてだ……。
その事実に少しだけ感動を覚えてレジに並んだ。
パプリカは苦手なので細かく角切りに、玉ねぎは細切りにする。
「玉ねぎはそれ以上細かくしないんですか〜〜」
彼女がひょっこりと顔をのぞかせていた。彼女は玉ねぎが苦手だ。
自分が苦手なパブリカだけ細かく切って、玉ねぎは細切りなのが不満なんだろう。
細く切ったからということ、シナシナになるまで炒めるから許して、と言うと納得してくれたのか日課の筋トレに戻った。
そうして材料を切り終え、フライパンにブチ込む。
あとは炒めるだけだ。残っていたゆで卵を食べることにした。
冷蔵庫からゆで卵と一番手前にあったケチャップを取り出す。
ゆで卵にケチャップをかけると「おいおい、正気か……?」とまあまあ引かれることが多い。
「オムライスにはケチャップかけるでしょ。だから合わないワケがないんだよな」と言うと「確かに…」と返ってくる。
意外と美味しいからやってみて欲しい。ゆで卵にケチャップ。
いい感じに火も通ってきたことだし。さて、ここらで粉かけるか。
ガパオライスの粉を棚から取り出した。
賞味期限2年ちょい前!?!??!??
これちょっと使うか悩むな…半年前とかなら躊躇なく使ってたけど、2年ちょいは……少し躊躇うぞ……。
火を通せば大丈夫だと思うけど、一応彼女に聞いておこう。
彼女「火通せば大丈夫なんじゃない?」
使った。
思ってたよりもコショウが効いていて、辛いのが得意じゃない彼女は少し食べづらそうだった。
今度は粉を使わずに、彼女が食べやすそうな味で作ってみよう。