「えっ、これもやし大丈夫?酸っぱくない?」
お昼ご飯に出した豚の生姜焼きを食べて彼女がそう言った。
作ったのは昨日でちょっと時間経ってたし、消費期限ギリギリだったかもだから、もしかしたらアウトだったかもしれない。
「えっマジ?」と俺もパク、と一口。
…
……
酸っぱいか……?
一人暮らし始めたての頃、消費期限が2日過ぎたもやしはもっと強烈に酸っぱかった。何より匂いで分かる。
いや、でもどうだろう。鼻とか味覚が敏感なのは間違いなく彼女の方だ。
俺が過去に腐らせたもやしがレベル10くらいだったとして、今のこいつはレベル5くらいのヤバい状態なのかもしれない。
ただ俺は衛生観念が若干壊れてるので
「ま、腹壊したら腐ってたってことで」
と思ってパクパク食べた。
夕方。チョコブラウニーを求めて近くのスーパーに行った。
雨が降りそうだったので一旦引き返した。「降らないといいな」と内心思ってたけど、結局傘を取りに戻ってる途中で本降りになってきた。
スーパーに着いてすぐにいつもブラウニーが売ってるところへ向かう。
だけどいつもあるはずのところにブラウニーの姿がなかった。
なに、チョコブラウニーも買い占められてんの?
いつも大体5個くらい売れ残ってるじゃん!?!??
なんで欲しいときに限って無いんだ???
お菓子コーナーに行ってみてもブラウニーの姿は無かった。
結局彼女は柿の種を買った。
パッケージを見ると、どうやら柿とピーナッツの比率が変わってピーナッツが少なくなるらしい。
子どもの頃はピーナッツがあんまり好きじゃなかったけど、今はむしろピーナッツの方が好きまである。
だから少しだけ悲しかった。
夜はおひたしとみそ汁を作って、豚の生姜焼きの残りも出した。珍しく和食で固めた。
お昼に生姜焼きを食べてから、現時点では腹を壊してなかったので大丈夫と判断した。
もしも翌日地獄を見たらごめん。
彼女は恐る恐る生姜焼きを口に運んだ。
「今度は酸っぱくないや。お昼のは何だったんだろう……寝起きだったから……?」
と首をかしげながら食べた。苦手な豚肉も少し食べてくれた。
ナスが安かったのでみそ汁にはナスを入れた。
ナスは昔から嫌いだったハズなんだけど気づけば食べれるようになっていた。
ピーマンやトマトもそうだ。好きではないけどまあ食える、みたいなところにまで達していた。
こうやって、特に理由はないけど嫌ってた食べ物とか、子どものときは無理だった食べ物とか知らないうちに食べれるようになるのかな。
でもそら豆、てめーだけは食べられるようになる気はしないけどな。