この前、会社のビルの社員用通用口のドアの建付けがブッ壊れて会社から出られなくなりました。
時刻は22時。俺は仕事を終えて、通用口から出ようとした。
ガッ
開かない。
本来ならドアノブをひねれば開くはずなんだけど。
ガッ
今日は開かなかった。
施錠されているのかと思って確認してみたけど、それも無さそう。
引っ張ったり押したりしてみたけど、結果は芳しくなく。
2,3分くらい鉄扉と奮闘していたら、後輩のAちゃんとBちゃんが来た。
Aちゃん「先輩、何してるんですか?」
俺「いや、出られなくなって…」
Aちゃん「いやいや、さすがにそれはウソ笑」
Bちゃん「もしかして私たちと一緒に帰りたくて待ってたんですか?」
Aちゃん「それならそう言ってくださいよ~笑」
ブッ飛ばすぞ。
ガッ
Aちゃん&Bちゃん「「マジだ…」」
こういう時は管理人さんに助けを請おう、と管理人室に向かったものの当然こんな夜に人がいるワケもなかった。
もう終わりか、そう思った矢先にAちゃんが管理会社の連絡先を見つけた。
Aちゃん「ちょっと連絡してみますね」
Bちゃん「じゃあ私は警備会社に連絡してみます」
俺「じゃあ俺は待ってるね」
俺、無能。
Aちゃん「後で折り返しくれるらしいです」
Bちゃん「警備会社の方は、出動自体は可能だけどお金発生するし100パー開けられる保障はない、って話だったんで一旦断りました」
そんなこんなをしていると少し残業していたCちゃんがやってきた。
Cちゃん「あれ、誰かと待ち合わせですかぁ?」
呑気すぎねえ!?!??
ここ13時の渋谷ハチ公前じゃなくて、22時の職場ビル内なんですけど。
こんなところで誰を待つって言うんだよ。なあ、教えてくれよ。
俺はCちゃんに事情を説明した。
Cちゃん「ええっ、ヤバくないですかぁ?」
そう、ヤバいのよ。
Bちゃん「地下って何かありません?行ったことは無いんですけど」
とAちゃんを引き連れて地下の方面へと向かった。
Cちゃん「他に出入り口ありませんでしたっけ。ゴミ捨て場の方、出れた気がする…」
俺はCちゃんとゴミ捨て場の方面へ向かうことにした。
結論、まあ確かに出入口はあったけど、無慈悲にもシャッターが閉じられていた。
何でこんな防犯意識高いんだよ。
取られて困るものある?トイレットペーパーくらいだろ。
とりあえず戻って、地下に行った二人と合流。
Aちゃん「さっき管理会社から連絡あったんですけど、警備会社と概ね同じようなこと言ってました」
うーん、と全員で頭を抱えた。
Bちゃん「あ、じゃあ通行人に呼びかけてみません?外側からなら開くかも」
普段使用する出入り口はシャッターで遮られてて出入りは出来ない。
ただ、シャッターとは言えグリルシャッターなので外とやり取りは出来る。
こういうやつ。
というわけで、誰がやるか、という雰囲気になった。
全員が言い出しっぺのBちゃんに視線を移す。
Bちゃん「あ、やっぱ私?」
……いや、いやいやちょっと待て。この流れでいいのか?
俺、まだ何もしてなくね?
緑一点、一番年上にもかかわらず、だ。
「あの先輩、案山子みたいに立ってるだけだったんだけど笑」
「格ゲーのトレーニングモードかっつーの」
「サンドバックの方がまだ価値ある」
明日以降、会社での後輩同士の会話はこんな感じになってしまうのではないか。
ここでやらなきゃ明日から俺のあだ名が案山子orトレモorサンドバック以下のいずれかになってしまう。
ここでやらなきゃ…
ここでやらなきゃ……!
俺「やらせて下さい」
俺「すみません…あのぉ…その扉、開けられたりしませんかぁ…?」
通行人「いや、ちょっと無理そうですね」
俺「そうですか…ありがとうございました」
俺「ダメでした」
Cちゃん「そう言うと思って、残業してた上司呼んできました」
そう言うと思って!?!?!?!?
端からダメだと思われたってこと!?!?
そういえば俺、普段からおちゃらけ無能人間の烙印を押されてるんだったー!!そうだったー!!!チクショー!!
これが日頃の行いの報いだってか?
後輩に「いいか、俺みたいになるなよ」って言って回ったツケがこれか????
上司「ああ、はいはい、なるほどね」
などと俺が日頃の行いを悔い改めている間に、全てを理解したかのような上司。
ドライバーでドアノブを外し何やかんやすると……
ガコンッ!!
開いた。
上司「気を付けて帰ってね」
アーメンハレルヤ。神か?
いや、それにしても素晴らしい連携だったな。
Aちゃんは管理会社に連絡してくれた。
Bちゃんは警備会社に連絡してくれた。
Cちゃんは上司を呼びに行った。
……で、俺は…?
弱々しい声で助けを乞うた。
クソ情けねえ…。涙が止まらん。