奥さんが誕生日で、焼肉を食べたいと言ったので近所の焼肉屋に来た。
お腹も膨れたので、そろそろ帰りますか、となった矢先に店員さんがやってきた。
「熱いお茶か冷たい水、いかがですか?」
せっかくだしもらっていこう。
俺と奥さんは熱いお茶をお願いした。
しばらく待っていると、両手に持った湯呑みをマグニチュード500なのかってくらいガタガタ震わせながら店員さんがやってきた。
どうしてそんなに震えてるのか。西野カナか?
よく見ると、湯呑みと併せて伝票も持ってきていた。
なるほど、ちょっと持ちづらかったのかな。
店員さんは丁寧な所作でお茶と伝票を置き、マグニチュード500の震えなんて無かったかのように去る。
まあ別にこぼれたりしてないから気にしてないし、そもそも店員さんの名札に「研修中」と書いてあったし、慣れない接客で緊張で手が震えてたのかなくらいに考えた。
奥さんと「あの店員さん、エグいくらい手震えてたね」なんて話をしながら湯呑みに手を伸ばす。
俺「熱ゥ!?!?????」
何だこれ熱すぎる、マグマ?ああ、お茶か。
お茶ァ!?!?!??
飲ます気ないだろこれ。
と思うと同時に、俺は湯呑みを持ってきたあの店員さんに畏敬の念を覚えた。
飲み口の部分を持てば熱くないのに、飲む側の気持ちを考え、あえて持たないその心遣い。
熱いならお盆を使えばいいのに、湯呑み2つ程度で使うのはダサい、とでも言わんばかりの意識の高さ。
それに何より、この熱々の湯呑みを顔色一つも変えずに持ってくる根性。
敬意を表さざるを得なかった。
アンタやっぱすごいよ。
話のネタにしちゃってごめんな。
…
……
いや、やっぱ熱いならお盆使えば良くねえ……?