ぽぽすこ行進曲

精神年齢は高校生くらいで止まってます

弟の第2世代のベイブレードに挑んだ第1世代の俺のドラグーンギャラクシーがブッ壊れた

俺が中学3年生の頃くらいの話だ。

当時小学生だった弟がベイブレードにハマった。

かく言う俺も小学生の頃にベイブレードにハマっていたから、やっぱり男の子は一度はベイブレードを通るんだな、と何だか懐かしい気持ちになりながら弟を眺めていた。

「兄ちゃん、俺とベイブレードやろう」

不意に無邪気な顔で弟はそう提案してきた。

まったく、無知とは恐ろしいものだ。





昔、地元でベイブレード四天王として恐れられ、主人公の二つ名で呼ばれていた俺を知らないとは。





俺の二つ名の由来は主人公のベイブレードを使っていたこと、主人公の真似をしてこういう帽子の被り方をしていたことから付けられた。

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この真ん中の男





あれ、今書いてるの何だっけこれ。俺の黒歴史発表会だっけ?





ちなみにあと3人は、自分が負けそうになるとスタジアムを動かしたり息を吹いたりして妨害をしてくる『不正』。


自分の着ているズボンや上着のポケット全てにベイブレードを入れて持ち歩き、対戦相手毎に使うベイブレードを変えていた『四次元ポケット』。


ベイブレードの攻撃力を上げようとするあまり、カッターの刃などのマジモンの刃物を接着剤で付けたりしていた『違法』がいた。


余談だがこの『違法』、余計なものを外付けしていたせいで軸がブレてロクにベイは回らなくなるわ、接着が甘くてカッターの刃が回転している最中に色んなところに飛んでいくわでマジでどうしょうもないやつだった。


閑話休題。


命知らずな弟に四天王としての威厳を見せてやろう、とクローゼットの奥から当時愛用していた第1世代のアタックタイプのベイブレード、ドラグーンギャラクシーを取り出す。

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対する弟は第2世代のディフェンスタイプのベイブレード、グラビティペルセウス

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第1世代と第2世代の違いは主にベイ自体の大きさと金属の部分の多さだ。

第1世代は重りだけが金属でそこ以外はプラスチック、第2世代は重りと攻撃面が金属になって一体化している。
大きさは第2世代の方が一回り小さい。


弟「兄ちゃん、そのベイブレード、回転方向どっち?」
俺「確か左だったかな」
弟「そっか」

とそれだけ言うとベイブレードをカチャカチャといじり始めた。

ははん、対戦前に1丁前にメンテナンスしてやがるぜ。


ベイには右回転タイプ左回転タイプがある。

同じ回転方向同士だと何回も激しくぶつかり合うので、単純に回転数が多い方が勝ちやすく、パワー勝負になりやすい。

異なる回転方向ならぶつかる度にお互い弾かれて距離ができるのでパワー勝負になりにくい、とか多分そんな感じだった気がする。(曖昧)


それに加えてアタックタイプ、ディフェンスタイプ、スタミナタイプ、バランスタイプがある。

それぞれに無難に戦えるバランスタイプ以外は3すくみになっている。
そして、ディフェンスタイプはアタックタイプに強い。


要するにこの勝負、俺に不利なマッチアップ……!!

だけどそんな相性なんて関係ない、ひっくり返してやるよ!!

なぜなら俺はベイブレード四天王の一人、『主人公』だったからなァ!!!





「「3!! 2!! 1!!」」





ふと、弟はなぜベイの回転方向を聞いてきたのか疑問に思った。

ベイごとにあらかじめ回転方向は決まってるから、対戦前に聞いてそれを知れたところであまり意味はないからだ。

俺の弟だし単におバカさんだったのかな、そう結論づけ思考を放棄しかける。





「「ゴー!!シュート!!!!」」





お互い勢い良くベイをスタジアムへと射出する。




弟のベイは──





──右回転!!!





右回転のディフェンスタイプ……左回転のアタックタイプのドラグーンギャラクシーが一番相手にしたくないタイプだ!!

そんなピンポイントで苦手なタイプど真ん中なことがあるか……!?


いや、違う。大事なのはそこじゃない。

弟が回転方向を聞いてきた理由をよく考えろ。

確かに回転方向はベイ毎に予め決められているのが常識だ。

何故弟は俺のベイの回転方向を聞いた後、突然ベイをいじり出したのか。

アレは本当にメンテナンスだったのか……?

常識を疑え。

質問のタイミングも、質問そのものも少し不自然じゃなかったか……?

そこまで考えて、俺は一つの結論に至る。



弟のベイは回転方向を自在に変えることが出来るのでは──!?



俺「まさかそのベイブレード……!」
弟「想像している通り、両回転対応だよ」
俺「こ、の、ガキ……!」

噂には聞いたことがある、右回転も左回転も対応しているベイブレードがあると。

なんという慢心!!敵にみすみす自分の情報を与えるなんざ、おバカさんだったのは俺の方だ!!

だが今更後悔しても時既に遅し。戦いの火蓋は切って落とされている。


金属同士がぶつかる甲高い音が二度。三度。


上部に8枚、中部と下部にそれぞれ4枚ずつの計16枚のスパイクが付いた俺のドラグーンギャラクシーが弟のグラビティペルセウスに猛攻を仕掛けようと果敢に攻めていく。

だが弟のベイは難なく受け流し、攻撃を受ける度に一定の距離を取ってくる。

これじゃ、インファイトに持ち込みたくても持ち込めない。

ぶつかっては離れ、ぶつかっては離れ。

何度か攻防を繰り返すと俺のベイの方が先に徐々にグラつき始める。

俺「クソ、万事休すか……!」
弟「悪いな、兄ちゃん」

弟は勝ちを確信したのか、二ヤリと口角を釣り上げる。





俺「……なんつってなァ!!」





バカがよ!!!ここからだよ、ドラグーンギャラクシーはよォ!!


ドラグーンギャラクシーが搭載している『エンジンギア』が起動する。

エンジンギアとは、ゼンマイのパワーによってベイの軸先(底部)を高速回転させることでベイを加速させるギミックのことだ。


ギュルルルルル!と底部に仕込まれたゼンマイが音を立てて激しく回転、ドラグーンギャラクシーは体勢を立て直し、終盤にもかかわらず驚異的な加速を見せる。


弟は驚きのあまり目を見開く。

さすがのグラビティペルセウスも終盤になり、回転力が落ちてきている。

さっきの猛攻は無駄ではなかった。ダメージはちゃんと蓄積されていた!

エンジンギアが搭載されていなければ、勝っていたのは弟の方だっただろう。






俺「ブッッッ飛べえええええええ!!!!」





この勝負、もらったッッッ!!!!





バキィィィィン!!!!!





耳をつんざくような金属音。







スタジアムから弧を描いて場外に弾き出されたのは──







──俺のドラグーンギャラクシー……!?






いや、そんなことより!!ドラグーンギャラクシーに嵌めていた重りが砕けて、その破片が弟に迫っている──!!!


俺「危ねえ!!!!!!!」


弟を押し倒し、間一髪。怪我はしなかった。

破片はヒュンヒュンと風切り音を上げながら舞い、サクッと小気味良い音を立て、壁に突き刺さる。





俺・弟「「……マジ????」」






ていうか重りが砕けるってどういうこと??


2つのベイブレードをよく見比べると、第2世代のベイブレードのサイズが第1世代のベイブレードのちょうど重りのあたりまでの高さしかなかった。

どうやら第1世代と第2世代のサイズ差の問題で、ベイ同士がぶつかるとき、第1世代の方の重りに直接攻撃が当たるようになっちゃってて、無茶な負荷が掛かったことが原因で重りが砕けたみたいだった。


なに、じゃあ俺のドラグーンギャラクシーの16枚のスパイクの猛攻は?

え?スパイクじゃなくて、単に重りが当たってただけってこと?



まあドラグーンギャラクシーは壊れたけど、お互い怪我はなかったし、いいか。


弟「何かこういう、普段はライバル同士だけどたまに助け合うみたいな展開、アレだ」
俺「言いたいことなんとなく分かったかも」





俺・弟「「劇場版みたいだ」」






皆さんは世代を超えてのベイブレードバトルは危ないのでやめましょうね。





#ベイブレードの思い出

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by タカラトミー