ペリエ、という飲み物をご存じだろうか。
お洒落な言い方をしているが、まあ要するに炭酸水だ。
今日はこのペリエにまつわる話をしようと思う。
この話は、ペリエに踊らされた憐れな当時小学4年生の俺の話――。
家族で外食に行ったときのことだ。
多分いつも行ってるファミレスよりはちょっとお高めな店なんだろう、外観も内観もなんだかおしゃれな感じがしてるのが子どもから見ても分かった。
確か弟が小学1年生になったお祝い、とかで来た気がする。
飲み物のメニューを見ているとウーロン茶、オレンジジュース、コーラ、スプライトなどなど見慣れたメンツの文字が並ぶなか、下の方に見慣れない飲み物があった。
ペ リ エ
ペリエ…?なんだその飲み物は…?聞いたことないぞ…?
俺「すいません、ペリエってなんですか」
店員さん「ペリエはね、炭酸だよ~」
俺「なる……ほど」
店員さん「しゅわしゅわするよ〜」
炭酸がどんなものかくらい分かるわナメんな!???
炭酸、おしゃれなお店で初めて見かけた飲み物、簡単には味の想像が出来ない名前、気づけば俺はペリエに惹かれていた。
俺「じゃあペリエください」
この頃から食べ物に対する好奇心が強かったんだと思う。
俺は食べたことのない食べ物とか、どんな味なんだろうって思う味があったら真っ先に食べてみようと思うタイプだ。
例えば紙パックの豆乳のチョコミント味とかおしるこ味とかね。どっちも2度目は無いなって思った。(無慈悲)
店員「ペリエですね、かしこまりました~」
名前から想像するに、なんだか甘そうなイメージがした。
ピルクルとかカルピスみたいにパ行が名前に含まれる飲み物は甘くて乳酸菌とか入ってそうなイメージがある。
だからペリエもそんな感じなんだろうな、と安直な想像をした。
しばらくして、ペリエとやらは緑色のボトルでやってきた。これがペリエか。
少し遅れてお洒落なワイングラスもやってきた。
弟の方を見るとズデーンとしたグラスにオレンジジュースを注いでいた。
まったく、兄を見習え。兄を。
そういえば似たようなパッケージの飲み物を見たことがあるな。
ええっと確か、スプ……。
ああそうだ、スプライトだ。
フタを開け、注いでいくとしゅわしゅわと小気味良い音を立てながら透明な液体がグラス満たしていく。
ボトルが緑だったせいで中身の色が分からなかったけど、透明だったのか
パッケージの色味と言い、中身の色味と言いもうこれ完全にスプライトじゃん。
はいはいはい、そういう感じの味なのねオーケーオーケー。
ペリエ≒スプライト
俺の頭の中で完全に方程式が成り立った。
そして俺の口は完全にスプライトを受け入れる態勢になった。
グラスをゆっくりと傾けながらペリエを口に含んだ。
俺「マズい」
口に広がる炭酸の刺激と虚無。この後味、俺はよく知ってる……。
これは、水!!!!!
ペリエ≠スプライトじゃないか。
正しくは
ペリエ≒水だったんだ!!!
いやいや待て、落ち着け。もしかしたらスプライトをイメージし過ぎて正しい味が認識できなかっただけかもしれない。
今ならもう大丈夫だ。口の中もフラットな状態に戻した。もうスプライトだなんて思わない。
ペリエ、ごめんな。ちゃんとペリエ自身の味を受け止めてあげられなくて。
イヤだよな。スプライトと面影を重ねられたらペリエだってイヤだよな。
今度はちゃんとペリエ自身を見てやるからな。
そうして俺はもう一度、一口飲んだ。
俺「マズい」
ちくしょう!!これ水じゃねえか!!!なんで誰も止めてくれなかったんだ……!!
親「そりゃそうだろペリエだもん。お姉さん炭酸だって言ってたじゃん」
止めてよ親ァ!!(理不尽)
ペリエが単なる炭酸水だって知ってて頼む小学4年生がどこにいるんだよ……!!味付いてると思うじゃん!
どこにコーラとかオレンジジュースには目もくれず、ペリエを頼む小学4年生がいるんだよぉ……。
おかしいと思わなかったのかよぉ……。
この出来事があったせいで、俺は未だに普通の炭酸水があまり好きではない。(自業自得)