ぽぽすこ行進曲

精神年齢は高校生くらいで止まってます

店のトイレに出たゴキブリを退治してたら俺の異動が決まった

店長と二人の日だった。

 

その日はマジでパソコンの事務作業しかやることがなくて、このままでは寝てしまうと確信したので下っ端よろしくトイレの掃除をすることにした。

 

うちの従業員専用トイレは中々エグい環境だ。

 

じめじめしてる、和式、トイレのドアの鍵が閉まらない

 

満貫だ。8000点だ。(伝わらない)

 

それでも割とキレイなのは週2日ほど掃除してるからだろう。

 やっぱりキレイにしてるとゴキブリとか出ないんだなあ、そんなことを思いながらいつものように水を撒いていた。

 

 

そしたら出た。

 

フラグ回収がはえーんだよなマジで。

 

 

声が出なかった。人間、いきなり脅威に出くわすと声は出なくなるもんなんだな、とその時学んだ。

 

ゴキブリに最後に会ったのは一昨年の12月。彼女の家で4人で鍋を囲んでいるときだった。

 

その時は「男の俺がやらなきゃ」と使命感に駆られて、へっぴり腰ながらに駆逐してやった。かっこ悪い。

 

周りはギャーギャー叫びながらも

 

「キャスやろう、キャス」

 

と変なところで冷静だったけど、結局そのキャスはギャーギャー叫ぶ声しかリスナーに届けることはできなかった。

 

何が言いたいかというと、俺はその一度しかゴキブリを倒したことがないのだ。

しかも今回会ったやつは彼女の家に出たのよりデカかった。さすが都会。

 

ゴキブリは一つしかない出入り口の周りをしばし徘徊していた。

 

その間俺は微動だにしなかった。変に動いて刺激してもアレだと思ったからだ。アレだよアレ。わっかんねーかなぁ!(怖くてまともな思考ができてない)

 

壁に移動したのを確認すると俺はゴキブリ並みの速度で外に飛び出し店長のもとに擦り寄った。

 

彼女の家の時とは状況が違う。見栄を張る必要はないし、今回は他に頼れる人がいる。なら頼るべきだ。

そもそも新人が困ってるんだから手を差し伸べるのが店長だろう。(ゴミ)

 

俺「てんちょお~~ゴキブリが~~」(俺史上1番情けない声)

 

店長「え!?お前それだけのことで戻ってきたの!?!?」

 

俺「てんちょお~~そんなこと言わないでくださいよお~~」

 

そんなこんなで俺のナイスな交渉で店長を懐柔し、トイレへ連れて行くことに成功した。しかしあまりの大きさに店長も少々ビビったようで、どうするか悩んでいた。

 ふと、俺はゴキブリには洗剤が効くというのをどこかで見たのを思い出した。

 

俺「店長!そういえば洗剤効くらしいですよ!!俺に任せてください!」

 

店長「お前、仕事でもその積極性出せよな

 

店長の小言を、一昔前のラノベの難聴系主人公の如く聞こえていないフリをし、俺はガラス拭き用の洗剤を両手に持ってゴキブリの前に立ちふさがる。

 

なぜこんなに急にやる気になったかというと、弱らせる役を買って出ることでトドメを刺す役を店長に押し付けるためだ。(ゴミ)

 

店長「2個持ちなんだ……」

 

俺「相手が相手です。手を抜くべきではないと思います」

 

店長「仕事もそれくらい手を抜かないでほしい

 

店長のよく分からない小言をスルーし、ガラス拭きの銃口を向けて連射しようとトリガーに指をかけたところで店の内線が鳴った。

 

店長「出てくるわ」

 

俺「うそお!?」

 

うそも何も考えるまでもなく当然だ。内線とゴキブリ、どちらが大事か言うまでもない。

そして俺の指は止まることなく、トリガーを引き、勢いよくスプレーを噴射してしまった。無情にも呼んだ店長が不在という最悪の状況で戦いの火蓋は切って落とされた。

 

俺「ちっくしょおおおおおおおおおお」

 

俺はわき目も振らずにガラス拭きを連射した。後に、新卒の中に伝説の2丁拳銃使いが混じっていたという噂が流れるがそれはまた別の話。

 

ゴキブリを見ると明らかに衰弱していた。どうやら本当に効いているようだ。ああそうだ思い出した、ありがとう、どこかで見た2チャンネルのスレ。

ただ、俺はその弱ったゴキブリを眺めていることしかできなかった。

 

なぜならトドメを刺すのは店長の役目だからだ…………本音は怖いからだ。

 

2時間くらいに感じたが実際は30秒くらい経った頃だろうか。店長が若干神妙そうな顔で戻ってきた。

 

店長「倒せた?」

 

俺「バッチリです。弱らせました」

 

店長「…そっかぁ」

 

その時、初めて俺は店長の呆れた顔を見た。店長がほうきでゴキブリを掃こうとした時、今度は外線が鳴った。当然、店長は外線の方へと消えた。

 

もう……やるしかない、俺だって男だ。その時ようやく決断することが出来た。俺の中で何かが吹っ切れた瞬間だった。怖い怖いってビビってるくらいだったら、とっとと元凶をブチ〇したほうが精神衛生上いい、そうだろう?

 

数ある装備の中から俺はデッキブラシを選択した。小学生の時はよくトイレ掃除に振り分けされることが多く、デッキブラシの扱いに慣れていたからだ。あとリーチが長い

 

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俺「アァイ!!!」

 

トイレに情けない俺の声が響いた。デッキブラシを使って絶妙な力加減でエアホッケーのパックの如くゴキブリを吹き飛ばす。

 

一気に和式のふちまで飛ばすことができた。ナイスショット。ゴルフだったら余裕でイーグルだ。

 

あとは簡単だ。これでもかってくらいトイレットペーパーをカラカラカラカラと巻き取り、ゴキブリを包んで水に流した。命だけは見逃してやる、もう来るんじゃないぞ。

 

そんなこんなで対ゴキブリ、2度目の勝利である。充分働いたでしょ、これもう帰っていい?

 

余談だが、ゴキブリに出会ってからずっと俺はへっぴり腰だった。

 

トイレから出ると店長はそんな俺をよそに普通に事務作業をこなしていた。なんなの。

 

店長「お、戻ったか。お前、異動だってよ」

 

俺「え……うそぉ!?!?そんなあっさり!?!」

 

あっさり言われすぎて理解が追い付かなかった。

 

このお店で色んなことがあった。逆玉の輿ワンチャンあったりした。

 

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副店長から辛いラーメンをもらって食べたりもした。

 

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2年目の先輩に中指を立てられたり、「しね!」って言われたりした。

 

そして今日……ゴキブリを、倒した。ロクな思い出ねーな。

 

店長「次の店の店長に引継ぎでお前がプリキュア見てるってこと言っておくね」

 

 

 

 

 

 

ねえ!!他にもっと言うべきことない!??