前回の右側の抜歯からおよそ1ヶ月。今度は左側の上下を抜くことになった。
前回の闘いの記録
最後の晩餐(昼飯)
さすがに2回目ともなると、恐怖とかはなかった。
いやまあそもそも初回も怖くなかったですけど(半ギレ)
術前のご飯を楽しむ余裕さえあったから。
その代わりと言っちゃなんだけど、その日は朝から腹痛が止まらなかった。
多分、緊張から来る腹痛だろう。そりゃさすがに緊張くらいはするさ。
因みにお昼はセブンイレブンのロコモコ丼と家にあった賞味期限直前の牛乳。
朝にも牛乳飲んだけど中々無くならないもんだ。
昼食を終えると、友達と遊びに行くくらいの感覚で
「っしゃあ!クールビューティーに抜いてもらうかぁ!!(歯を)」
と意気揚々と家を出た。
クールビューティー、不在
前回、見た目とは裏腹に荒々しいテクニックで抜いてくれたクールビューティー。
扉をくぐると、俺を出迎えてくれたのは別の人だった。
小柄で、ショートカットで、日に焼けた肌。
その全てが相まって、活発的な印象を受けた。
この感じ、どこかで……
あっ!!!!!
陸上部で短距離をやってる女子だ!!!!!
俺は席に案内されながら、そんなことを思うのだった。
短距離女子「それじゃあ前回と同じ感じやっていきますけど、何か聞いておくこととかありますか?」
そんな「最後に言い残したことはあるか」、みたいな聞き方しないでよ。
裏切り者にトドメを刺すときの幹部キャラかっつーの。
聞いておきたい事は特に無かったけど、お腹が痛かった。
ていうかこれ絶対アレでしょ。牛乳、悪くなってたが故の腹痛でしょ。
俺「あの、トイレ行ってきてもいいですか」
短距離女子の「お前、術前に済ませとけよなァ……?」という視線が頭から離れなかった。
でもちゃんと行かせてくれた。
多分今頃部屋で「アイツ2回目なのにめっちゃビビってるじゃーん笑」って助手たちと盛り上がってそう。
チクショウ!!!短距離女子め!!!(被害妄想)
まあそれもそうだよな。もうちょいで抜けそう、ってときに
「すいませんちょっとトイレに…」
とか言われるの、ちょっとアレだもんな。
気分的に盛り下がる人もいるもんな。
なんですか、そういうの。寸止めって言うんでしたっけ。
短距離女子のテクニックや如何に
短距離女子「気持ちもう少しこっち向けますか」
そう言いながら結構無理やり首を動かされた。
この有無を言わさない感じ、嫌いじゃない。
短距離女子「痛かったら手挙げてくださいね」
そう言いつつも、既に指を突っ込まれてたので、俺は情けなく「ふぁい」と言う他なかった。
かくして、短距離女子との30分コースが始まった。
ガリッガリッ、ガリガリガリガリガリ
俺「(あっ、ちょっと痛ぇな)」
我慢できるけどまあちょっと痛むな、くらいの痛みが来たので手を挙げようとしたけど、クールビューティーのときのことを思い出した。
クールビューティーの「痛かったら手を挙げて」はリップサービスだったけれど、果たして短距離女子は本心で言っているのだろうか。
いや、迷うな俺。今目の前にいるのはクールビューティーじゃない。今相手してもらってる女性以外の女性のことを考えるのは失礼なのでは???
俺「スッ」
短距離女子は……
手を止めてくれた。
短距離女子「痛い?」
俺「ふぁい(はい)」
短距離女子「これは?」
俺「ふぁいろううれふ(大丈夫です)」
短距離女子「大丈夫ね、はーい」
めっちゃ優しかった。
ハードルは全て薙ぎ倒して進みそうな見た目なのに、すげー優しかった。(最低)
治療を終えるとガーゼを噛まされ、シートを起こされた。
助手が前回と同じ説明をした後に短距離女子は再び現れた。今の俺には慈愛に満ちた女神に見えた。
「うん、血、止まってますね」
いや、どこ見てそう思ったのかは分かんねーけど、止まってねーよ??出続けてるよ??
短距離女子はガーゼを取り、傷口をサッと拭いた。
えっ終わり!?!???
そんな雑な止血ある?サッと拭くだけとかクイックルワイパーかよ。だから止まってねえんだって。止まってねえっす。
短距離女子「お疲れさまでした」
止まってねえって!!!!
歯、持ち帰る
前回の俺
前回歯を持ち帰るかって聞かれたときにこうは言ったものの、彼女が抜けた歯を見たいって言ってたし、俺も記念に1個くらいって気持ちが芽生えてきたので1個持ち帰ることにした。
見た後結局すぐ家のゴミ箱にブチ込んだけど。